OKRで本当に成果は上がる?他手法との違い・成功と失敗を分けるポイントとは

ビジネス基礎
この記事は約6分で読めます。

結論からいうとOKRとは:

OKR(Objectives and Key Results)とは、「組織や個人の目標(Objective)」を大胆かつ明快に設定し、その達成度を測る「主要成果(Key Results)」を数値化してモニタリングするフレームワークです。MBO(目標管理)やKPI(重要業績評価指標)との違いは、“短期スパン”でのレビューと、“挑戦的な目標設定”により、組織全体の方向性を素早く揃えられる点にあります。

近年、GoogleやIntelなどの世界的企業をはじめ、日本国内でも急成長を遂げるスタートアップが導入していることで注目度が増しているOKR。

しかし、「OKRはすごい」「成果が出る」といった表面的な情報だけでは、いざ導入してもうまく機能しないケースも散見されます。

そこで本記事では、他の目標管理手法とOKRの違い、成功と失敗を分ける要因、実際の活用事例をわかりやすく解説します。

OKRの基本概要

OKRは「Objective(目標)」と「Key Results(主要成果)」の2つの要素から成り立ちます。

Objective(目標)

• 「定性的」でインスピレーションを与える方向性

• 例:「新製品の認知度を業界トップクラスに引き上げる」

Key Results(主要成果)

• 「定量的」で客観的に進捗を測れる指標

• 例:「SNSフォロワー数を前年比150%に増やす」「メディア掲載数を月5本以上獲得する」

OKRの特徴は、「目標を高く設定する」ことと「短い期間でチェックとアップデートを行う」ことです。四半期など短期間ごとに進捗状況を見直し、必要に応じて柔軟に修正していくことで、常に成果にフォーカスし続けることができます。

他の目標管理手法との違い

1. MBO(目標による管理)との比較

共通点

• いずれも「目標」を軸にして業績管理を行う

• 個人の行動を企業戦略と結びつける、という考え方は同じ

相違点

• MBOは通常、年度単位で目標を設定し、評価や報酬に直結しやすい

• OKRは四半期など短いスパンで“挑戦的な目標”を設定し、70~80%の達成でも良しとする風土を重視

• 多くの企業はOKRを報酬や人事評価と切り離すことで、失敗を恐れずにチャレンジしやすい環境を作る

2. KPI(重要業績評価指標)との比較

共通点

• 数値を定め、進捗を“見える化”する

• チームや個人の行動をデータで計測し、改善に活かすアプローチ

相違点

• KPIは「必達」の数値目標になりがちで、達成できない=評価が下がると認識されることも

• OKRは「ストレッチ目標」(達成率70~80%でも十分価値がある)を設定することで、創造的な取り組みを奨励

• KPIが細分化されすぎると視野狭窄に陥るリスクがある一方、OKRは大きなObjectiveで常に全体最適を意識

3. バランス・スコアカード(BSC)との比較

共通点

• 「財務視点」「顧客視点」「プロセス視点」「学習と成長視点」など、企業の重要要素を測定する枠組み

• 組織の戦略と日常オペレーションを結びつけるための指針

相違点

• BSCは企業全体の多角的な視点を包括的に管理するため、比較的長期目線の施策管理に適している

• OKRは短期集中で実行フェーズを加速するため、“進捗サイクルの速さ”が決定的に違う

• BSCとOKRを併用し、OKRを“戦略的重点施策”にフォーカスする手法も見られる

OKR成功の鍵は“組織文化”と“心理的安全性”

OKRを導入しても思うような成果が得られない原因の一つに、「挑戦的な目標設定ができない」もしくは「失敗を許容できる雰囲気がない」という問題があります。

挑戦的な目標が生まれにくい組織の特徴

1. 失敗した人を厳しく批判する風土がある

2. 管理職が数値の未達を必要以上に責める

3. 毎日の行動管理に終始し、自由度がない

心理的安全性との関係

• 「意見を言っても否定されない」「失敗しても次の学びにつながる」という空気がなければ、高い目標設定はされにくい

• 経営層やマネージャーが「OKR達成度は失敗しても構わない、そこから何を学ぶかが重要」と繰り返し発信する必要がある

• 失敗を“組織学習の種”と捉えられるようになると、社員が自発的にアイデアを出しやすくなる[1]

具体例:OKR×アジャイル開発の事例

IT企業A社では、アジャイル開発チームにOKRを取り入れ、短いスプリント(2週間)ごとにKey Resultsの進捗を振り返る運用を行いました。

目標の可視化により、スクラムミーティングでも常に「どこまで成果が上がっているか?」を具体的に確認できます。

進捗モニタリング

• 毎週のスクラムでKey Resultsの達成度を数値で共有

• アプリの継続率に関わる機能改修の効果を随時検証し、リリースサイクルを最適化

得られた成果

• チーム全員が“ユーザ体験の向上”にフォーカスし、エンジニア・デザイナー・マーケターが連携

• 機能追加やUI改善案が活発に出るようになり、試作品のテストも迅速化

箇条書き:OKR導入時に押さえておきたいポイント

1. 報酬や人事評価と切り離す

• OKRを人事評価に直結させると、失敗を避けて安全策に走る恐れがある

2. 各チームや個人が“Objective”を言語化できるよう支援する

• 「なんとなく理解している」状態を避け、誰が聞いてもわかる言葉で目標を表現

3. 進捗を追う“チェックインの文化”を定着させる

• 四半期単位のOKRでも、週1など短い周期で振り返る“チェックイン”を実施し、修正を躊躇しない

4. Key Resultsはアウトプットだけでなく“アウトカム”を重視

• 例:成果物の量(アウトプット)だけでなく、「売上」「顧客満足」「継続率」など実際に価値を生む指標(アウトカム)を追う

5. 組織全体の“透明性”を高めるツール活用

• 専用のOKR管理ツールやプロジェクト管理ツールで、達成度をリアルタイム共有

• 例:Googleスプレッドシートやプロジェクト管理SaaS(Asana, Trello, Jiraなど)

まとめ:OKRは“手法”以上に“文化”である

OKRは単なる目標管理の「手法」ではなく、“挑戦的なゴールを全員で追いかける文化”を生み出すための仕組みと言えます。

• 最初は「MBOの延長?」と戸惑いがちですが、失敗を成長に変える組織文化を醸成することで、OKRは真価を発揮します。

• まずは小さなプロジェクトや部署で試し、成功事例を共有しながら、社内に“心理的安全性”と“透明性”を根付かせていくことが重要です。

• 「高すぎる目標を掲げて大丈夫かな?」と不安になるかもしれませんが、そこに新たなイノベーションの芽が潜んでいるかもしれません。ぜひ一度取り組んでみてください。

参考文献

[1] Edmondson, A. C. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.
[2] Doerr, J. (2018). Measure What Matters: OKRs: The Simple Idea that Drives 10x Growth. Penguin
[3] Felipe Castro, “Why OKRs fail (and how to make them work),” OKR Coach & Speaker (2021).
[4] Slaven, S. F., & Key, M. (2021). The influence of OKRs on organizational alignment: A European SME case study. The TQM Journal, 33(8), 123-145.

タイトルとURLをコピーしました