結論からいうとSaaS(Software as a Service)とは:
インターネット経由で提供されるソフトウェアサービスのことを指します。従来のソフトウェアのように、ユーザーが自分のコンピューターや企業のサーバーにインストールするのではなく、クラウド上にあるソフトウェアにアクセスして利用します。GmailやGoogleドキュメント、Microsoft 365、Salesforceなどが代表的なSaaSの例です。
このモデルの最大の特徴は、ユーザーがソフトウェアのインストールや更新を意識することなく、常に最新の状態で利用できる点にあります。また、従来のソフトウェア購入とは異なり、SaaSは月額または年額のサブスクリプションモデルが主流であり、初期導入コストを抑えられるメリットがあります。
SaaSの背景と歴史
SaaSの概念は、1990年代後半のASP(Application Service Provider)から発展しました。ASPは特定の業務向けにカスタマイズされたソフトウェアをインターネット経由で提供するモデルでしたが、カスタマイズの難しさやコストの高さが課題でした。
2000年代に入ると、クラウドコンピューティングの発展により、より汎用的でスケーラブルなSaaSが登場しました。特に、Salesforceが提供するクラウド型CRM(顧客管理システム)は、企業がインフラを持たずに高機能なソフトウェアを利用できることを示し、SaaSの普及を加速させました。
現在では、SaaSは企業のIT戦略において不可欠な存在となり、業務システム、財務管理、プロジェクト管理、カスタマーサポートなど、多くの分野で活用されています。
SaaSの特徴と機能
SaaSは、以下のような特徴を持っています。
- インターネット経由で利用可能
- どこからでもアクセスできるため、リモートワークとの相性が良い。
- インストール不要・自動アップデート
- ソフトウェアの更新がクラウド上で自動的に行われるため、ユーザー側で管理する手間が不要。
- サブスクリプションモデル
- 月額または年額で利用できるため、大規模な初期投資が不要。
- スケーラビリティが高い
- 必要に応じてユーザー数や機能を拡張・縮小できる。
- マルチテナントアーキテクチャ
- 複数の企業が同じソフトウェアを利用しながらも、データは完全に分離・管理される。
SaaSとオンプレミスの違い、導入メリット・リスク
SaaSと従来のオンプレミス型(企業内にサーバーを設置し、ソフトウェアを運用する方式)の主な違いを整理すると、以下のようになります。
項目 | SaaS | オンプレミス |
---|---|---|
導入コスト | 低い(月額・年額制) | 高い(サーバー・ライセンス購入が必要) |
メンテナンス | 不要(プロバイダーが対応) | 必要(社内IT部門が対応) |
アップデート | 自動更新 | 手動更新 |
セキュリティ管理 | プロバイダー依存 | 自社で管理可能 |
アクセス性 | どこからでも可能 | 社内ネットワーク内のみ |

近年、多くの企業がオンプレミスからSaaSへ移行する流れが加速しています。その背景には、オンプレミスの課題とSaaSの圧倒的な利便性が関係しています。
オンプレミスの課題
- 高額な初期投資と維持コスト
- 自社内にサーバーを設置し、ハードウェアやソフトウェアのライセンスを購入する必要がある。
- システムの老朽化に伴い、定期的な設備更新が求められる。
- 運用管理の負担
- IT部門がセキュリティパッチの適用やソフトウェアの更新を手動で行う必要があり、人的リソースを圧迫。
- スケーラビリティの問題
- ビジネスの成長に伴い、サーバーの増設やシステム拡張が必要だが、これには時間とコストがかかる。
- 災害対策やデータのバックアップが課題
- オンプレミス環境では、災害時にデータを復旧できる体制を自社で整える必要があり、リスク管理の負担が大きい。
SaaSの導入メリット
これらの課題に対して、以下のようなメリットが評価され、SaaSの市場は年々拡大しています。
- コスト削減
- 初期導入費用を抑えられ、ハードウェアの購入・管理が不要。
- IT部門の負担が軽減される。
- 迅速な導入
- インターネットに接続するだけで利用でき、導入までの期間が短縮できる。
- リモートワーク対応
- 場所を選ばずアクセス可能なため、柔軟な働き方を実現しやすい。
- 常に最新の機能を利用可能
- セキュリティ更新やバグ修正が自動的に適用される。
- スケーラビリティ
- 事業の成長に応じてユーザー数や機能を拡張可能。
SaaSの導入リスク
一方で、導入に際して以下のリスクには留意する必要があります。
- データセキュリティ
- 自社外のサーバーにデータを預けるため、情報漏えいやハッキングのリスクがある。
- カスタマイズ性の制限
- 企業独自の要件に合わせたカスタマイズが難しい場合がある。
- プロバイダー依存
- サービス提供元の障害や事業撤退により、業務が影響を受ける可能性がある。
- ランニングコストの増大
- 長期的に見ると、オンプレミスよりもコストが高くなる場合がある。
SaaSの実際の使用例
- 顧客管理(CRM)
- Salesforce(顧客データの管理・分析、営業支援)
- オフィスツール
- Google Workspace / Microsoft 365(メール、スプレッドシート、ビデオ会議)
- ビジネスチャット
- Slack / Chatwork(社内外のチームコミュニケーション)
- プロジェクト管理
- Asana / Trello(タスク管理、プロジェクト進行管理)
- 会計・財務管理
- freee / マネーフォワード クラウド(経費精算、会計処理)

まとめ
SaaSは、企業のITインフラを効率化し、コスト削減やスピーディな業務遂行を可能にする重要なテクノロジーです。一方で、データ管理やセキュリティ、カスタマイズの制限などのリスクも伴います。
SaaSを導入する際は、業務の適合性を慎重に評価し、セキュリティ対策や契約条件(SLA)を十分に確認することが不可欠です。
あなたの会社では、SaaSをどのように活用していますか?
出典リスト
[1]: Salesforce公式サイト – https://www.salesforce.com
[2]: Microsoft 365公式サイト – https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365
[3]: Google Workspace公式サイト – https://workspace.google.com/intl/ja/
[4]: 経済産業省「クラウドサービスのセキュリティガイドライン活用ガイドブック」 – https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/downloadfiles/cloudseckatsuyou2013fy.pdf