結論からいうとタックマンモデルとは：
チームが発展する際に必ず通る5つのステージを定義したフレームワークです。このモデルを理解することで、チームの現状を把握し、適切なマネジメントを行うことができます
ビジネスの現場では、チームのパフォーマンスを最大限に引き出すことが求められます。しかし、チームの成長には段階があり、自然に高いパフォーマンスを発揮するわけではありません。その成長プロセスを体系的に説明するのが「タックマンモデル（Tuckman’s Stages of Group Development）」です。
本記事では、タックマンモデルの背景や詳細、実際のビジネスでの活用法について詳しく解説します。
タックマンモデルの背景と歴史
1. タックマンモデルの誕生
タックマンモデルは、アメリカの心理学者 ブルース・タックマン（Bruce W. Tuckman） によって1965年に提唱されました。当初、彼はチームの成長を 「形成期（Forming）」「混乱期（Storming）」「統一期（Norming）」「遂行期（Performing）」 の4つの段階に分けました。
この研究は、チームがどのように成長し、どの段階でどのような課題が生じるのかを明らかにした画期的なものでした。その後、1977年にメアリー・ジェンセン（Mary Ann C. Jensen）と共同研究を行い、チームが解散する段階 「解散期（Adjourning）」 を追加しました。
2. どのような背景から生まれたのか
このモデルは、組織心理学の分野でチームの発展を研究する中で生まれました。タックマンは、チームが単なる人の集まりではなく、段階的に進化する組織体であることを見出しました。このモデルは、特に プロジェクトチームや組織の変革プロセス において有効とされ、現在も企業のチームマネジメントや人材育成の指針として活用されています。
タックマンモデルの詳細な解説
タックマンモデルでは、チームの成長プロセスを5つの段階に分けています。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 形成期（Forming）
特徴:
- チームのメンバーが初めて集まる段階。
- 役割や目標が不明確であり、互いに探り合う。
- リーダーの指示が重要な役割を果たす。
具体例: 新しいプロジェクトが立ち上がった際、メンバーが集まり、自己紹介をしながら関係を築く段階。ここでは、リーダーがビジョンや目的を明確に伝えることが求められます。
2. 混乱期（Storming）
特徴:
- 意見の対立や摩擦が生じやすい。
- 役割分担の不明確さがストレスの原因になる。
- チームの方向性を巡る衝突が起こる。
解決策:
- リーダーはファシリテーターとして、議論を建設的に進める。
- メンバー間の信頼関係を築くためのコミュニケーション強化が必要。
具体例: 新規事業プロジェクトの初期段階で、営業部門と技術部門が目標設定について対立することがあります。この段階で適切に対処しないと、チームの崩壊につながります。
3. 統一期（Norming）
特徴:
- 役割分担が明確になり、チームワークが強化される。
- 目標達成のために協力する意識が高まる。
- 信頼関係が築かれ、摩擦が減少する。
具体例: 混乱期を乗り越えた後、営業と技術部門が協力し合い、互いの強みを活かした戦略を策定できるようになる。この段階では、リーダーの役割は徐々にサポート役へと変化します。
4. 遂行期（Performing）
特徴:
- チームが高度に自律し、生産性が最大化される。
- 課題解決能力が向上し、効率的な業務遂行が可能。
- リーダーは最小限の介入でチームをサポート。
具体例: プロジェクトが軌道に乗り、メンバーが自発的に問題を解決するようになる。この段階のチームは、意思決定のスピードも速くなります。
5. 解散期（Adjourning）
特徴:
- プロジェクトの終了や目標達成に伴い、チームが解散する。
- 成果を振り返り、次のプロジェクトへの学びを得る。
- 達成感や喪失感が混在する。
具体例: プロジェクトが成功裏に終了し、メンバーがそれぞれ新たなチームへ移る。このとき、成果の振り返りや成功事例の共有が重要になります。
4タックマンモデルの実際の使用例
1. 新規事業開発チーム
- 形成期: メンバーが集まり、ビジョンを共有する。
- 混乱期: 意見の対立が発生し、方向性を明確にする必要がある。
- 統一期: 役割分担が明確になり、チームワークが強化される。
- 遂行期: チームが高度に自律し、成果を上げる。
- 解散期: プロジェクトが終了し、成果を振り返る。
2. アジャイル開発チーム
アジャイル開発では、タックマンモデルの各段階が短期間で回ることが特徴です。特に スクラム では、スプリントごとにチームの進捗を振り返り、迅速に成長していきます。
まとめ
タックマンモデルは、チームの発展プロセスを理解するための強力なフレームワークです。特に、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- チームの成長には 必ず段階がある。
- 混乱期は避けられない ため、適切なリーダーシップが必要。
- 遂行期に至るためには、統一期での信頼関係の構築が不可欠。
あなたのチームは今、どの段階にいますか？このモデルを活用して、チームの成長を加速させましょう。
出典
- Tuckman, B. W., & Jensen, M. A. C. (1977). Stages of Small-Group Development Revisited. Group & Organization Studies, 2(4), 419-427.
- Katzenbach, J. R., & Smith, D. K. (1993). The Wisdom of Teams. Harvard Business Review Press.