結論からいうとSTP分析とは:
マーケティング戦略の基本となるフレームワークです。市場を細分化(Segmentation)し、最も適したターゲットを選定(Targeting)し、そのターゲットに対して自社のポジショニング(Positioning)を明確にすることで、効果的なマーケティング活動を展開できます。
企業が競争優位性を確立し、顧客の心をつかむためには、単に広告を打つだけでなく、的確な市場戦略が不可欠です。STP分析を活用することで、企業はリソースを最適に配分し、競争の激しい市場で確実に成果を上げることができます。
本記事では、STP分析の背景や歴史、詳細な解説、実際の使用例を交えながら、ビジネスの現場で活用する方法を解説します。
STP分析の背景と歴史
市場の多様化とターゲットマーケティングの進化
かつて、企業は大量生産・大量消費を前提としたマーケティング戦略を採用していました。しかし、消費者のニーズが多様化し、市場が成熟するにつれて、「すべての顧客に同じ商品を提供する」モデルでは成功が難しくなりました。
この背景から、アメリカの経済学者ウェンデル・スミス(Wendell R. Smith)が1956年に「市場細分化(Market Segmentation)」の概念を提唱しました[1]。これが現在のSTP分析の基盤となっています。
その後、フィリップ・コトラー(Philip Kotler)がSTPの重要性を強調し、多くの企業がマーケティング戦略に組み込むようになりました。特に1990年代以降、デジタルマーケティングの発展とともに、STP分析の活用がさらに進化し、今日の企業戦略に不可欠なフレームワークとなっています。
STP分析の解説と機能

STP分析は、以下の3つのプロセスから構成されます。
① Segmentation(市場の細分化)
市場を年齢、性別、地域、ライフスタイル、購買行動などの観点から分類するプロセスです。代表的なセグメンテーションの手法として、以下の4つがあります。
- 地理的セグメンテーション(Geographic):都市・地方、気候、国・地域などで分類
- 人口統計的セグメンテーション(Demographic):年齢、性別、職業、所得などで分類
- 心理的セグメンテーション(Psychographic):価値観、ライフスタイル、趣味などで分類
- 行動的セグメンテーション(Behavioral):購買履歴、ブランドロイヤルティ、使用頻度などで分類
② Targeting(ターゲットの選定)
セグメントごとに市場の規模、成長性、競争状況を分析し、最適なターゲット市場を選定します。ターゲティングのアプローチには以下の3つの戦略があります。
- 無差別型マーケティング:市場全体をターゲットにする(例:コカ・コーラ)
- 差別型マーケティング:複数のセグメントに異なるアプローチをする(例:トヨタの車種展開)
- 集中型マーケティング:特定のニッチ市場に特化する(例:テスラのEV市場)
③ Positioning(ポジショニングの確立)
選定したターゲットに対し、競争優位性を築くためのブランドイメージや価値を明確にします。ポジショニング戦略を考える際には、「ポジショニングマップ」を活用し、競合との違いを視覚化することが有効です。
たとえば、スマートフォン市場では、「価格」と「性能」の軸でポジショニングをマッピングし、Appleは「高価格・高性能」、Xiaomiは「低価格・高性能」といった差別化を行っています。
STP分析の実例
① ファッション業界:ユニクロのSTP戦略
- S(市場細分化):年齢、性別、ライフスタイル、購買行動で分類
- T(ターゲティング):シンプルで機能的な衣類を求める20〜50代の幅広い層
- P(ポジショニング):「高品質かつ低価格なライフウェア」
② 自動車業界:トヨタとレクサスの差別化
- S(市場細分化):所得、ライフスタイル、嗜好による分類
- T(ターゲティング):トヨタ=大衆向け、レクサス=富裕層向け
- P(ポジショニング):「トヨタ=信頼性の高い大衆車」「レクサス=高級志向のプレミアムカー」
③ テクノロジー業界:Appleのブランディング
- S(市場細分化):デザイン・使いやすさを重視するユーザー層
- T(ターゲティング):クリエイター、ビジネスパーソン、ハイエンド志向の消費者
- P(ポジショニング):「直感的な操作性と高級感のあるブランド」
STP分析はマーケティングの核に
STP分析は、ターゲットを明確にし、自社の強みを最大限に活かすマーケティング戦略の核となる手法です。適切に活用すれば、無駄な広告費を削減し、競争優位性を確立できます。
繰り返しますが、STP分析の3つの要素は次の通りです。
- Segmentation:市場を細分化し、ターゲット層を特定
- Targeting:市場規模・競争状況を分析し、最適なターゲットを選定
- Positioning:ターゲットに対して競争優位性を築く
あなたの会社では、STP分析をどのように活用していますか?
出典
[1]: Wendell R. Smith (1956). “Product Differentiation and Market Segmentation as Alternative Marketing Strategies.” Journal of Marketing.
[2]: Philip Kotler, Kevin Lane Keller. (2016). “Marketing Management.” Pearson.
[3]: Michael Porter. (1985). “Competitive Advantage.” The Free Press.